自己責任は役人政治家こそとるべき
2004年5月4日
宇佐美 保
今回イラクで拘束された高遠菜穂子さん、今井紀明さん、郡山総一郎さんは、解放されたというのに、日本に於ける「自己責任バッシング」の嵐に曝されてしまわれました。
大変お気の毒です。
この「自己責任バッシング」に異議を唱え拙文《人質と自衛隊のイラク撤退》、《イラク人質と拉致問題と武士道》、《日米政治家の格の相違と杉原千畝氏》、《米人質の代償に自衛隊の撤退》、《ダッカ人質事件と米国人》、と何通も書き続けてきましたので、今回は、別なる問題点を書こうと存じて今した。
しかし、前報の《日本人論客達のお粗末》にも書きましたが、5月1日のテレビ朝日『朝まで生テレビ』の視聴者アンケート結果、
日本政府の言う“自己責任”は是か非か? | |
肯定する:181件 | 否定する:137件 |
日本は今後イラクに何をすべきか? | |
自衛隊の活動を続けるべき:83件 | 自衛隊の撤退:43件 |
を見て、拓殖大学教授森本敏氏は、
日本人の感覚はバランスがとれている |
と発言しました。全く呆れた教授様です。
そして、今の時期に於いても未だ、人質の方々への「自己責任」を問う声の多さに驚愕し、これでは、拙文をもう一方書かなくてはならないと思ったのです。
この「自己責任論」の端的な例を、週刊新潮(2004.04.29号)“「救助費用」20億円なのに「自己負担」は35万円”の記事に見ることが出来ます。
全文は、文末の(補足)に掲載させて頂きますが、問題箇所を順次掲げ、反論を以下展開して行きます。
先ずは、
4月16日の朝日新聞を読んだ読者の中には、「やっぱり」と、思わず溜息を漏らした方もいたかもしれない. イラク人質事件の記事に、「(救出の)費用は20億円くらいかかったのではないか」という自民党関係者の算盤勘定が載っていたからだ。 3人の命を救うために投じられる20億円の血税―― 自己責任の原則を踏まえれば、「人質や家族たちに負担をさせろ」との声が上がるのは当然だ。が、実際に負担額として弾き出されたのは1人たった35万円に過ぎなかった。外務省関係者が費用について説明する。 …… 自民党の担当記者もこんな話をする。 「一番大きいのは、人件費でしょう。事件の影響で、外務省だけでなく、全ての在外公館や危機管理に関係する役所は、連日、徹夜の態勢を取りました。……数千人の人間が1週間以上、右往左往させられて、2桁の億になるのは当たり前です」 |
こんな事を、朝日の記者も、週刊新潮の筆者も本気で取り上げて書いているのですか!?
そして、こんな記事を読んで、(特に、「20億円」という大金にびっくり腰を抜かして)「20億円も無駄遣いさせやがって、人質になった奴等は飛んでもない奴等だ!」と思い込む日本人は情けない方々です!
日頃、外務省はどんな仕事をしているのですか!?
『バカの壁(養老孟司著)』の次なる記述を見るまでもないことです。
……外交によって国益を守るということよりも、省のために働くことが優先されているのです。少なくともそうとしか見えない。 ここでいかにも共同体的だと思えるのは二世、三世の世襲キャリアが非常に多いことそのくせ仕事は大して無い、というのは、他の官庁の連中が口々に言っています。 …… 鈴木宗男氏との癒着の問題で、外接省の次官が外国から呼び戻された時に、帰国しての第一声で「外務省はこの難局に当たって一致団結し……」と言ったのは象徴的でした。 実に頭に来ました。 …… 「みんなで一致団結」というのはどういうことなのか。世間は誰もそんな姿勢を求めておらず、当然、悪い膿を出すことを期待していました。にもかかわらず「省員の一致団結」とは……。いかに彼らが世論を考えておらず、共同体(筆者注:この場合は外務省)の成員としての考え方しかないかというのが、その一言でわかった気がしました。 |
その後、外務省は、私達が期待した「悪い膿を出すこと」を実施したとは思えません。
その上、日頃何もしないと云われている外務省は、年間予算(2004年度)を721,226,341千円(約7212億円)も無駄遣いしているのです。
この1年間の無駄遣い(約7212億円)の、約1日分で、
20億円≒19.7億円/1日=7212億円/365日 |
サムライの国の民、私達の真の心“義を見てせざるは勇なきなり”を世界に知らしめることが出来たのではありませんか!?
(拙文《イラク人質と拉致問題と武士道》)を御参照下さい)
3人の方々は、立派な民間外交官としての使命を果たされたのではありませんか!?
なのに、サムライの心の一欠片もない政治家やマスコミ人、そして普通の人達(養老孟司曰く(本音はバカ)、いわゆる国民)は、「この3人の功績を、ドブに捨ててしまったのです!」
そして、この3人へ対して、パウエル米国務長官や、フランスのルモンド紙等の評価が(上記の愚かな方々と異なり)高いと言うことは、上記の愚かな方々は、3人の行為を評価される一部の日本人達への国際的評価をも、一緒にドブに捨ててしまったのです。
私達の大事な宝物を、かって、世界中から非難された「エコノミック・アニマル」的発想でもって、ドブに捨ててしまった責任を「政治家や役人、そしてその尻馬に乗ったマスコミら」にとって頂きたいのです。
更には、週刊新潮は次のようにも書いています。
自民党の担当記者もこんな話をする。……国会は1日空転すると2〜3億円の金が余分に掛かると言われていますけど、…… |
何でこんな事を、人質の方々への「自己責任問題」として、ぶつけるのですか!?
ぶっつけ先を間違っています。
碌でない議論しかしない国会議員に、そしてその議員を選択する国民、そして、それを糾弾しないマスコミなどに向けるべきです。
このくだらない国会論議の代表的な例は、「自衛隊のイラク派遣」でもありますが、もっと端的な例は、「年金問題」(この件は、次の拙文《「年金」で「自己責任」をとらされる国民》でも記述します)です。
先の、拙文《インチキ評論家が年金は黒字と嘘を言う》、《一元化の前に共済年金の実態を明らかに!》の記しましたように、「国民年金」や「厚生年金」が破産の憂き目に遭っている原因は、政府官僚達が囃し立てている「少子化」がではなくて、「年金積立金を官僚や族議員達が食いつぶし」によるものなのです。
(だってそうではありませんか!
「国民年金」や「厚生年金」同様に、「積立金方式」で運用され、「年金積立金を官僚や族議員達が食いつぶし」が行われなかった「共済年金」は黒字なのです。)
こんな事実にも気が付かない、愚かなマスコミ、国民は、「日々、2〜3億円の金が掛かるという」国会運営や、その議決を尊重して有り難がって居るのです。
そして、その対価を「自己責任」として、自分で考えることが出来ない、考えることもしない、私達国民が払わされるのです。
(補足:1)
「救助費用」20億円なのに「自己負担」は35万円
(週刊新潮2004.04.29号)
4月16日の朝日新聞を読んだ読者の中には、「やっぱり」と、思わず溜息を漏らした方もいたかもしれない. イラク人質事件の記事に、「(救出の)費用は20億円くらいかかったのではないか」という自民党関係者の算盤勘定が載っていたからだ。 3人の命を救うために投じられる20億円の血税―― 自己責任の原則を踏まえれば、「人質や家族たちに負担をさせろ」との声が上がるのは当然だ。が、実際に負担額として弾き出されたのは1人たった35万円に過ぎなかった。外務省関係者が費用について説明する。 「被害者全員が帰国するまでは、オペレーション続行中ですので、細かい計算はできません。しかし、逢沢外務副大臣や、随行職員たちがアンマンに行き、飛行機をチャーターしたり、宿泊代、ホテル代に通信費と情報源への心付け……。表立って支出しているお金だけでも、3〜4000万円は軽く超えています。この額は、外務省だけの経費ですから、内閣府、警察庁など他の省庁の分は一切含んでいません」 自民党の担当記者もこんな話をする。 「一番大きいのは、人件費でしょう。事件の影響で、外務省だけでなく、全ての在外公館や危機管理に関係する役所は、連日、徹夜の態勢を取りました。例えば、国会は1日空転すると2〜3億円の金が余分に掛かると言われていますけど、人件費を計上できるかどうかはともかく、数千人の人間が1週間以上、右往左往させられて、2桁の億になるのは当たり前です」 しかし、それでも比較的解決が早かったことが、費用面でプラスに働いたというのが大方の見方だ。 「もし長引くようならば、人件費がかさむのはもちろんですが、なにより邦人保護マニュアルに従って、外務省は欧米の危機管理の専門会社に人質解放の仕事を発注しなければならなかったところです。この手の会社はあらゆる手段を講じて、人質解放の成功率も高いのですが、値投も極端に高く、契約の段階で1件5憶、10億を支払わねばならない。 じやあ、どうしてすぐに頼まなかったかというと、実は家族たちの当初の態度に外務省の職員みなが腹を立てていて、危機管理会社に連絡しようという積極的な意見が出なかったからです」 (外務省関係者) 印税の特別ボーナス 一方、被害者の負担する35万円が何かというと、「バグダッドからドパイまでチャーター機に乗せましたが、その費用をエコノミークラスに換算した金額と、ドバイの病院での健康診断料です」 (官邸記者) 外交評論家の田久保忠衛氏が苦言を呈す。 「雪山で遭難したって自己責任。遭難者に相当部分が請求されるのは常識です。 なぜ、我々の税金で負担しなければいかんのか。普通なら、″一生かかっても自分たちで払います″というのがスジですよ」 ちなみに高遠さんが2年前に書いた自伝『愛してるって、どう言うの?』(文芸社)は、今まで2000部が出版されていた。 ところが、今回の事件を契機として問い合わせが殺到したため、出版社は急遽、3万部の増刷を決めた。 一般的な計算では印税約300万円が彼女の懐に転がり込むはずなのである。 |
(以上の記述は〈ケチな人間は、ケチな見解を発っする〉の典型と感じます。)
(補足:2)
週刊新潮が引用した朝日新聞(4月16日)の記事
「人質解放の費用公表を」 政府・与党に自己責任問う声 日本人3人の解放から一夜明けた16日、政府・与党内から、退避勧告にもかかわらずイラク入りした3人の自己責任を問う指摘が相次いだ。これまでは救出交渉に支障が出かねないと抑えられてきたが、解放が確認されたことで3人の行動への不満が噴出した形だ。3人の家族は同日午前、国会内で自民党の安倍晋三幹事長に会い「ご迷惑をかけて申し訳なかった」と陳謝した。 16日朝の与党対策本部では、公明党の冬柴鉄三幹事長が「損害賠償請求をするかどうかは別として、政府は事件への対応にかかった費用を国民に明らかにすべきだ」と発言。自民党の役員連絡会では額賀福志郎政調会長が「渡航禁止の法制化も含めた検討をすべきだ」と主張した。会合後に記者会見した安倍幹事長は「山の遭難では救助費用は遭難者・家族に請求することもあるとの意見もあった」と指摘した。 自民党の外務政務次官経験者は記者団に「費用は20億円くらいかかったのではないか」と語った。また、閣議後の閣僚懇談会では、北海道出身の中川経産相が「人質の家族が東京での拠点に使った北海道の東京事務所の費用負担をどうするか、知事は頭を痛めている」と紹介した。 閣僚の記者会見でも、3人の行動への非難の意見が続いた。井上防災担当相は「家族はまず『迷惑をかけて申し訳なかった』と言うべきで、自衛隊撤退が先に来るのはどうか。多くの方に迷惑をかけたのだから、責任を認めるべきだ」。河村文部科学相は「自己責任という言葉はきついかもしれないが、そういうことも考えて行動しなければならない。ある意味で教育的な課題という思いをしている」と語った。
一方、石破防衛庁長官は「想定される危険から身を守る能力をもった組織は現在の日本国では自衛隊のほかない、ということで自衛隊が行っている。渡航自粛勧告が出ているわけで、(イラク支援活動は)いまは自衛隊でなければできない」と述べ、3人がイラク入りしたこと自体に無理があったとの見方を示した。 |
(何と恥ずかしい議員達なのでしょうか?!
創価学会を母体とする公明党の幹事長たる冬柴氏は、ブッダの教えの「慈悲の心」さえもご存じないようです。)
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